
母国にいる親を呼び寄せたい!どうしたらいい?
- 親を呼び寄せるためのビザはありませんが、いくつかの条件を満たせばビザを取得できる場合があります。
- まずは「短期滞在」ビザで呼び寄せた後、高齢で1人暮らし、かつ病気の場合には、人道的配慮から「特定活動」ビザ(老親扶養:告示外特定活動)が認められる場合があります。
「特定活動」ビザ(老親扶養)って取得が難しいの?
現在の日本の法律では、海外にいる親を日本に呼び寄せて、いっしょに生活するための明確なビザは存在しません。
母国の家族を呼び寄せるビザの一つとして、「家族療滞在」ビザがありますが、呼び寄せられる対象者の範囲は、扶養を受ける配偶者または子のみとなり、残念ながら親を「家族滞在」ビザで日本に呼び寄せることはできません。
しかし、母国にいる親が1人暮らしで、高齢で、なおかつ病気持ちで、だれも面倒を見てくれない場合、何とか日本に呼び寄せていっしょに暮らすことはできないのでしょうか?
このような場合、人道的な立場から特別な事情があると認められれば、「老親扶養」という名目の下、「特定活動」ビザを発給してくれる場合があります。
しかしながら、あくまで特例であるため、具体的な要件や申請に必要な書類などが明確に決まっているわけではなく、個別のケースごとに本当に特別な事情があるかどうかを審査されます。
よって、「老親扶養」という特別な事情で認められる「特定活動」ビザは、明確な基準があるわけではないため、取得が難しいビザの一つといえます。
それでも許可される例はありますので、許可を得るための大まかな要件を見ていきましょう。
「特定活動」ビザ(老親扶養)を取得するための要件は?
母国から日本に親を呼びよせる場合、上記で述べたように明確な基準は定められていませんが、少子高齢化の日本では社会保障費が財政を圧迫していることもあり、高齢者の受け入れには慎重な審査がされています。
①【親が高齢であること】
明確な年齢の基準はありませんが、原則70歳以上という年齢が目安となります。
例えば、50代60代の方であれば、家族が面倒を見なくても母国で1人で十分に暮らしていけるため、重い病気にかかっている、あるいは障害があるなどの理由が必要になります。
②【母国で面倒を見てくれる身寄りがいないこと】
母国に他の子どもや親族などがおらず、申請する人以外に親の面倒を見る人がいないため、人道的に日本に呼び寄せる必要があるという状況が必要となります。
例えば、一人っ子の方が自分の親を日本で扶養する場合や、兄弟姉妹はいるものの、全員が帰化しており、自分たちの親を日本で扶養する場合などが当てはまります。
③【1人で暮らしていること】
1人暮らし以外の場合は、母国で誰かが面倒を見てくれて生活が成り立つ、すなわち日本に呼び寄せる必要がない、とみなされてしまうため、原則1人暮らしである必要があります。
両親2人いれば、子どもがいなくても2人で支え合って生活できると判断されてしまう可能性が極めて高いからです。
ただし、両親2人で暮らしているものの、その2人ともが病気や介護が必要な状況であれば、誰かが世話をする必要があるため、認められる可能性があります。
④【何らかの病気を患っていること】
病気や寝たきりで介護が必要であるから、人道的に日本に呼び寄せて自分が世話をする必要があるということが求められます。
したがって、高齢であっても健康で暮らしている場合には許可される可能性は低いでしょう。
ビザの申請時に、病院から発行された診断書を提出する必要があります。
また、扶養する人が仕事をしている場合は、日中は誰が親の面倒を見るのか?という問題があります。そのため、仕事をしている独身の方の場合や、夫婦共働きの場合は、申請のハードルがあがります。
この問題を経済面で解消しようとする場合(介護ヘルパーを雇うなど)は、逆に日本に呼び寄せて扶養する必要はなく、母国にいるままで老人ホームやヘルパーを雇用すればいいのではないか、という問題も出てきます。
⑤【扶養する人の年収が高いこと】
扶養者に安定した収入や貯蓄が十分あり、生活保護などの日本の行政機関の援助がなくても、問題なく生活できることを証明する必要があります。
明確な定めはありませんが、おおよそ年収800万円以上くらいが目安になっているようです。
その他にも貯蓄や不動産などの日本での資産状況を説明し、十分に扶養できることを出入国管理局に説明していきます。
ですから、申請者が生活保護を受けているような場合には、許可されることは難しくなります。
この点、永住申請や帰化申請の際に求められる収入条件よりも、はるかにレベルの高い水準を求められます。
「特定活動」ビザ(老親扶養)で認められる活動内容は?
「特定活動」ビザ(老親扶養)は、扶養者の扶養を受けて生活することが原則となるため、収入を伴う活動をすることはできません。
基本的にはアルバイトもNGです。
アルバイトができるぐらいなら、誰かの扶養を受けるまでもなく、自分一人でも生活できると判断されてしまう可能性があるためです。
「特定活動」ビザ(老親扶養)の在留期間は?
「特定活動」ビザ(老親扶養)の在留期間は、原則1年となり、1年ごとに更新していくことになります。
「特定活動」ビザ(老親扶養)は特別な事情がある場合にのみ認められるビザなので、更新の際にも厳しい審査が行われることが想定されます。
「特定活動」ビザ(老親扶養)取得の流れは?
「特定活動」ビザ(老親扶養)は、制度上定められたビザではないため、在留資格認定証明書で直接呼び寄せることはできません。
したがって、いったん「短期滞在」ビザで日本に入国してから「特定活動」ビザ(老親扶養)に在留資格変更許可申請を行います。
ただし、上記でも述べたように「特定活動」ビザ(老親扶養)は制度上認められたビザではないため、はじめから直接窓口に提出するのではなく、出入国管理局の審査部門に事前に申請をしていいかを相談する必要があります。
申請後に許可を受けることができれば、出入国管理局で在留カードを受け取ることになります。
「特定活動」ビザ(老親扶養)の申請に必要な書類は?
「特定活動」ビザ(老親扶養)は、特別な事情があると認められた場合にのみ、特別に取得できるビザのため、申請に必要な書類などは明確に決まっておらず、出入国管理局のホームページにも必要な書類についての記載がありません。
よって、上記の「特定活動」ビザ(老親扶養)を取得するための要件をしっかりと押さえた上で、それらを証明できるような書類を提出する必要があります。
まとめ
母国にいる高齢の親を日本に呼んで暮らしたいという気持ちはよくわかりますが、今の日本の制度では、「高度専門職」ビザなどの一定の場合を除いて、人道的な理由がない限り母国から親を呼び寄せることはできません。
しかし、人道的・合理的な理由が認められれば、「特定活動」ビザ(老親扶養)で呼び寄せることは可能ですので、ご心配なことがありましたら、Start行政書士事務所までご連絡ください。