在留資格シリーズ~技術・人文知識・国際業務って何~?

在留資格シリーズ~技術・人文知識・国際業務って何~?

  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の中に規定されている職業に当てはまらないと、日本で働くことができません。例えば、美容師さんやネイリストには、この在留資格では就労できないのです。
  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、「専門的な知識や技術が必要な」仕事でしか働くことができません。よって、レジ打ちなどの単純作業の仕事には就くことができません。
  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するには、大きく3つの要件があります。

就労ビザとは?

外国人が日本で働くためには、日本で働くことが認められた在留資格を取得する必要があります

就労ビザと呼ばれるものです。

ただ、一般的に就労ビザという言葉が使われますが、就労ビザという名前の在留資格はありません。

現在、日本で働くことが認められた在留資格は、17種類があります。

その中で、会社または個人事業主が外国人従業員を雇用する場合のほとんどが、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格に当てはまります。

(イメージとしては、ビシっとスーツを着てバリバリ働く外国人です。)

「技術・人文知識・国際業務」以外にも、「経営・管理」「技能」「企業内転勤」など、日本で働く外国人には、どのような形態で働くか(職業)によって、それぞれの種類の在留資格が与えられます

ここでは最も一般的な「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(ビザ)について説明します。

 

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格とは

外国人が日本で働く場合、企業にやとわれて技術者や企業内で働くケースが一番多いと思われます。

技術者など企業で働く場合に必要となるのが、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格です。
(ちなみに、私たち行政書士はその頭文字をとって「技人国(ぎじんこく)」と呼んでいます。)

現在、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に在留している外国人の数は、約19万人おり、年々その数は増えています。

具体的には、どのような仕事が当てはまるのでしょうか?

  • 英会話学校の講師として働きたい(雇用したい)
  • ホテルで通訳として働きたい(雇用したい)
  • 建設業者で施工管理として働きたい(雇用したい)
  • ホームページ制作会社でSE(システムエンジニア)として働きたい(雇用したい)

など、これらはすべて「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(ビザ)に該当します。

しかしながら、業務内容によっては、この「技術・人文知識・国際業務」のビザを取れない場合もあります。
なぜなら、「技術・人文知識・国際業務」のビザでは、原則、「専門的な知識や技術が必要な仕事」をしてもらう必要があるからです。

よって、肉体労働、単純作業、サービス業は基本的にNG、認められません。
工事現場の作業員、工場の製造ライン、ホテルなどの清掃業務、飲食店の接客などが、認められない代表的な例です。
(要は、誰でも出来る仕事ではダメだということですね。)

認められる代表例は、システムエンジニア、設計業務、経理、翻訳・通訳などです。
このように、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取るためには、まずは外国人の方がどんな職種に就くのかが重要になります。

それでは、「技術」「人文知識」「国際業務」の詳しい内訳を見ていきましょう。

「技術」とは?(いわゆる理系のお仕事)

技術」に該当する業務は、「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術を要する業務」とされています。
具体的には、『機械工学等の技術者、システムエンジニア等のエンジニア』があります。
「技術」として在留資格を取得した具体的な事例は以下のとおりです。

  • 電気製品の製造を業務内容とする企業において、技術開発業務に従事。(大卒・工学部)
  • コンピューター関連サービスを業務内容とする企業において、ゲーム開発業務に従事。(専門学校卒・マンガ・アニメーション科)
「人文知識」とは?(いわゆる文系のお仕事)

人文知識」に関する業務は、「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務」とされています。
具体的には、『企画、営業、経理などの事務職』があります。
「人文知識」として在留資格を取得した具体的な事例は以下のとおりです。

  • 法律事務所において、弁護士補助業務に従事。(大卒・法学部)
  • 建築設計・設計監理・建築積算を業務内容とする企業において、建築積算業務に従事。(専門学校卒・建築室内設計科)
「国際業務」とは?(いわゆる外国人ならではの考え方や感じ方を生かすお仕事)

国際業務」に関する業務は『外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務』とされています。
具体的には、『英会話学校などの語学教師、通訳・翻訳、デザイナー』があります。

  • 語学指導を業務内容とする企業において、英会話講師業務に従事。(大卒・教育学部)
  • コンピューター関連サービスを業務内容とする企業において、翻訳・通訳に関する業務に従事。(大卒・経営学部)

 

「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請の具体的な要件は?

上記のいずれかに当てはまったら、次は申請のために大きく3つの必要な条件(要件)があります。

  1. 報酬は日本人と同等かそれ以上か
  2. 「技術・人文知識」「国際業務」それぞれの職に就く資格や能力があるか
  3. 継続した雇用が見込めるか
1.報酬は日本人と同等かそれ以上か

具体的に、いくら以上の給与が必要かは決まっていません。(目安としては月額18万円以上だと安心ですね)
外国人働く先の機関で働いている日本人と同じ職位の場合に同等かそれ以上であればかまいません。
ただし、報酬の考え方には注意が必要です。

日本企業で「基本給が低く、各種手当を加算しての他の企業と同等の給付額にしている」というところがよくありますが、この考え方を外国人の報酬に当てはめてはいけません。

在留資格で要求されている「日本人と同等かそれ以上の報酬」とは、あくまで労働の対価である「基本給」部分においてのみです。

外国人の基本給を低くし、日本人の基本給と合わせるために色々な手当てを加算していく方法では条件を満たしません。

なお、外国人の報酬を日本人より抑え、その理由を「日本人と同等の額の報酬だと外国人の母国の生活水準だと高給に当たる」などというのは通用しないので注意が必要です。

また、雇用形態ですが、正社員でないとダメというわけではなく、契約社員でも派遣社員でも大丈夫です。
雇用期間も自由に設定できます。例えば、「雇用期間を1年と設定して、その後の更新もありうる」といった具合です。

社会保険については、日本人従業員を採用したときと同じと考えてください。
労働時間や休日についても、労働基準法に違反していなければ大丈夫です。

2.「技術・人文知識」「国際業務」それぞれの職に就く資格や能力があるか

「技術・人文知識」と「国際業務」でそれぞれ満たすべき条件が違います。

A「技術・人文知識」の分野で在留資格認定証明書を申請する場合

基本的に次に挙げる(ア)(イ)のいずれかに当てはまることが必要です。

(ア)大学で就こうとしている職種に必要とされる知識や技術に関する科目を専攻した上で卒業したこと、または同じレベルの知識や技術を得るために大学以上の教育を受けたこと(「大学」には大学院や短期大学も含む)
専門学校で就こうとしている職種に必要とされる知識や技術に関する科目を専攻したうえで専門課程を修了したこと

(イ) 就こうとしている職種に関する業務で10年以上の実務経験があること
(大学や専門学校での専攻期間を実務経験期間に含めることが出来る)

B「国際業務」の分野で申請する場合

基本的に次に挙げる全てに当てはまることが必要です。
翻訳、通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、商品開発、服飾や室内装飾のデザインの業務や、これらに似た業務をすること。
就こうとしている職種に関する業務で3年以上の実務経験があること。
(ただし、翻訳・通訳・語学指導に就く場合には、学部関係なく大学を卒業していれば実務経験はなくてもよい(経験年数は必要ないということです)。)

3.継続した雇用が認められるか

働くことができるのは、「企業(会社)」に限られません。
入管法では「本邦の公私の機関との契約に基づいて…」とあります。
簡単にいえば、地方公共団体や独立行政法人、国内にあれば、有限会社や個人事業主の下でも働くことができます。
(ただし、現実的に個人事業主の場合は法人に比べて信用度が低いため、受け入れ機関としては難しいです。)

ただし、どの機関でも、働く機関(企業など)が「適正」で「安定性・継続性」があることが求められます。
「適正」とは、簡単に言うとその機関(企業など)が「きちんと法律を守っていること」ということです。

また、「安定性・継続性」とは、「外国人が働く機関がずっと業務を続けられるだけの体力がある」ということです。
簡単に言えば、すぐに倒産するような企業ではないということですね。

要は、外国人を呼び寄せるためだけに作った、ペーパーカンパニーでないかどうかなどが厳格に審査されるわけです。

以上を表にすると、以下の通りです。

 

「技術・人文知識・国際業務」ビザが取れない場合はどのようなとき?

<不許可事例と5つのポイント>
在留資格の新規認定申請や更新申請で不許可になった場合、必ず不許可になる理由があります。

【ポイント1】履修内容と職務内容の関連性

「技術・人文知識・国際業務」を取得する外国人が行う業務は「技術や知識などの専門性が必要な業務」です。

「技術や知識などの専門性が必要な業務」を行うためには、大学や専門学校で専門的な技術や知識を習得する必要があります。

大学や専門学校で専攻した科目と関連しない分野に関しては、「技術や知識などの専門性」があるとは判断されません。

ですから、「大学や専門学校で専攻した科目」と「従事する職務内容」が関連していることが重要になります。

例えば、以下の事例は履修内容と職務内容の関連性が認められず不許可になった事例です。

【不許可事例】
専修学校(国際ビジネス学科)を卒業し、専門士の称号を付与された者から、同じ国のアルバイトが多数勤務する日本の運送会社において、同じ国のアルバイトを指導するため、翻訳・通訳業務および労務管理業務に従事するとして申請があったが、教育及び翻訳・通訳業務と専攻した科目との関連性が認められないため不許可となった。
【ポイント2】職務内容の専門性

「技術・人文知識・国際業務」を取得する外国人が行う業務は「技術や知識などの専門性が必要な業務」ですので、単純作業のような業務は認められません

以下の事例は、宿泊客の荷物の運搬および客室の清掃業務などは「技術や知識などの専門性が必要な業務」ではないと判断され、不許可になった事例です。

【不許可事例】
本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が、日本のホテルに採用されるとして申請があったが、従事する予定の業務に係る詳細な資料を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬および客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となった。

また、フロント業務として申請して、実務研修と称してレストランの配膳や清掃業務に従事されるようなケースも不許可になります。

さらには、飲食店のホール係の仕事が全体の8割、会計記帳の仕事が2割では経理財務の仕事に十分な業務量があるとは認められず、入国管理局からの許可はおりません。

 

【ポイント3】日本人と同額以上の給与

ビザの申請をする際に、採用予定の外国人従業員と締結した「雇用契約書」または、会社が発行した「労働条件通知書」を提出する必要があります

上記で述べたように、外国人であることだけを理由に日本人に比べて給与を安く設定することは禁止されています

外国人と日本人が同じ業務内容の場合、外国人の報酬は日本人と同額以上とされています。

以下の不許可事例は、日本人と外国人が同種の業務でありながら外国人の報酬が日本人に比べて低く設定されていたために不許可になった事例です。

【不許可事例】
日中通訳翻訳学科(専門士)を卒業した者から、輸出入業を営む企業において、月額17万円の報酬を受けて、海外企業との契約書類の翻訳業務および商談時の通訳業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したことから、報酬額について日本人と同等額以上であるとは認められず不許可となった。
【ポイント4】 雇用の必要性

大学や専門学校での専攻科目と職務内容が一致していて、給与も日本人と同等だったとしても、そもそも外国人が行う業務が雇用する会社にとって必要なものでなければ不許可となる可能性があります

どうしても外国人を雇う必要があるという合理的な理由が必要になります

以下の事例では、日本語を専攻した大学卒業生が通訳業務を行うことは問題ありませんが、通訳する言語に必要性がないと判断されて不許可になった例です。

また、例えば、スペイン語の通訳が出来たとしても、その旅館の外国人宿泊客でスペイン語を話す外国人がほとんどいない場合、その旅館でスペイン語通訳の需要はほとんどないと判断されます。(需要がない場合には許可されないということですね)

【不許可事例1】
本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、日本の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となった。

次の例は、従業員が12名という会社の規模では、コンピューターによる会社の会社管理や労務管理で一人雇うほどの作業量はないのではないかと判断されて不許可になった事例です。

【不許可事例2】
専修学校(情報システム工学科)を卒業し、専門士の称号を付与された者から、本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき、月額25万円の報酬を受けて、コンピューターによる会社の会計管理(売上・仕入・経費等)、労務管理、顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが、会計管理及び労務管理については、従業員が12名という会社の規模から、それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと、顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術」「人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可になった。
【ポイント5】 在留中の素行

大学や専門学校に通っている間の素行に関しても審査の対象となります

以下の事例は、週28時間以内とされている資格外活動での就労(アルバイト)の規則を破り、1年以上継続して月200時間以上アルバイトをしていたため、在留状況が良好であるとは認められず不許可となった事例です。

【不許可事例】
大学(商学部)を卒業した者から、貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき、月額20万円の報酬を受けて、海外取引業務に従事するとして申請があったが、申請人は「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが明らかとなり、資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、その在留状況が良好であるとは認められず、不許可となった。

 

まとめ

「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を取得するためには、専攻科目と職務内容の関連性や職務の専門性、企業の支払う給与など審査基準があります。

外国人を技術者や事務職として雇用する場合、専攻科目との関連性や給与額などが基準にあっているかを必ず確認するようにしましょう。

在留資格シリーズ~「技術・人文知識・国際業務」手続編~
☆日本に留学するには、「母国から直接日本の大学に進む」場合と、「日本国内の日本語学校などで日本語を学んでから大学に進む」場合があります。 ☆日本語学校に入学するためにも、最低限の日本語能力が必要です。また、日本の大学に留学する際にも、日本の大学の過半数が、日本への留学希望者の日本語力と基礎学力を測る「日本留学試験(EJU)」を利用しています。 ☆留学生も「資格外活動許可」を得ればアルバイトをすることができます。

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